色々なものを彫金で作れるようになると、宝石を使った本格的なジュエリーを作ってみたくなってきます。
今回はエメラルドカットのルースでリングを作ってみようと思います。
市販で販売されている空枠にルースを留める方法はこちらで解説しています。
お気に入りの石からオーダーメイドで作る方法なので、ネットオークションや石屋さんで購入したルースで自由にアクセサリーを作れる様になると制作の幅も広がって楽しいです。
いちばん簡単で基礎的なリングの作り方は、下記ページで解説しています。初めての方はこれからトライしてみてください。
エメラルドカットの石留リング
※重ね付けアイテム:槌目のリング、三つ編みリング
必要な道具
ハニカムブロックというロウ付けに使う耐熱レンガと、ピンセットが2個あると便利です。
ピンセットは100均のもので問題ありません。熱くなりにくく、錆びないステンレス製のものがおすすめです。
ロウ付けを長時間するとピンセットが熱くなってきますので、柄の長いピンセットもあると良いと思います。
おすすめツール ( tuucul的おすすめ度 ★★★★☆)
KFI ピンセット K-19 精機用(1,892円)
長いピンセットの安物は、熱すると先が反ってきてしまい、使いづらい上に危ないです。
プロの職人さんもみんな使っているベストセラーで、ピンセットにしては地味に高いですが、ちゃんとしてます。
また、精密ヤスリの笹葉・刀刃のいずれかが必須です。
基本的な道具や精密ヤスリは下のページで紹介しています。
使用する材料
今回は2.5mmの真鍮棒と、1.2mm板、石を留める爪の1mm線、そしてエメラルドカットのアクアマリンのルースを使って作っていきます。
アクアマリンは比較的丈夫で割れにくく、初心者でもおすすめの石です。ほかにも初心者向けだと、ガーネット、トパーズ系が作りやすいかと思います。
(割れやすいかよりも、値段で決めた方がいいかもしれません。)
輝石だとダイヤモンド、ルビー、サファイアは滅多なことでは割れないので、ガシガシ道具が石にあたっても割れませんので初心者向けです。(価格はとんでもないです。)
参考:自宅で金と天然ダイヤの指輪を作る手順(K18のロウ付け・ダイヤを割らずに留める方法)
逆に絶対に避けた方がいいのはエメラルド、パライバトルマリンなどです。これらは地面に絵を描く蝋石のごとく脆く、すぐにパリッと割れて、悲しいコトになってしまいます。
ご存知の通りパライバやエメラルドは超希少石なので、良い物はダイヤモンドより高価です。
形見や譲り受けた壊れたジュエリーについていたからと言って、手を出してしまうと取り返しのつかない事になってしまいます。
20個くらい石留をこなして、安いエメラルドからチェレンジしてみましょう。
とは言っても私は宝石の専門家ではありませんので、お手持ちの石がどのような特性を有していて、どのような扱い方が適切なのかは、私が語るよりもGIAなどの専門機関のサイトを参照した方が正確です。
GIAの公式サイトから調べると、各石の特性を理解することが出来ます。
作り方の手順
石座を作る
まず、石のサイズを測ります。今回は5.2mm×7.1mmでしたので、板材にケガキ針で四角形をかきます。
この時、ちょっとだけ小さく(5mm×6.9mm)ケガくと良いです。
石よりも石座の方がわずかに小さいと、完成後に上から見たときに石枠が見えなくなり、石が綺麗に見えるためです。
真ん中あたりを油性ペンで塗りつつ、ピンバイスで穴あけします。
油性ペンの書き方が適当すぎますが、本当はもう少し丁寧にやった方がいいです←
糸鋸の歯を穴に通した状態でセットして、ナナメに削るように切っていきます。
中心に向かってすべり台のようにする感じです。
精密ヤスリなども使いながら、ギリギリのところまでやります。
石のガードルと板の感覚が上図になるくらいまで行います。
無理だと思った方は、簡易的な方法でスロープを作らないやり方もあります。
糸鋸で0.7mm幅くらいに切ってしまう方法で、下図右のようなイメージです。
お皿状にした方が、磨いたとき金色の地金の色がアクアマリンに乗って、石が明るく見えるためです。
ダイヤモンドなどの場合はギリギリまで受け皿を削って、光が入り込むようにします。
裏側から見るとこんな感じになりました。
精密ヤスリで整えています。
石座が横から見たときに、二段になっているものを「二段腰」と呼んだりします。
二段腰は、華奢で繊細な雰囲気を与えられる他、光がいろいろな方向から差し込むので、石がキラキラして見えます。
上段の方がほんの少しだけ厚い方がバランスがよく見えてGOODです。(隙間の感覚はあまり話しすぎるとかっこ悪いので、最大でも上段の厚みくらいで良いでしょう。)
下段は、作りたいリングサイズの大きさで芯金棒を使って板を丸めます。
大きさ・形にはある程度法則があります。
上と下の側面が一直線の斜めになるようにしていきます。ぴったりそうするのは難しいですが、大体で構いません。
角度はデザインによって色々ですが、しっくりくるのはリングの底から石の幅をつないだラインかと思います。
先ほどの真ん中を四角く切り抜き、光穴を作ります。光穴とは、文字通り光の差し込む穴のことで、より石を明るく見せる効果があります。
これはただの四角い穴ですが、ハイジュエリーなどはここに模様の透かしを入れたり、文字の形に切り抜いたりと、職人さんの遊び心を表現する粋なポイントでもあります。
ダイヤのパヴェなどは特に、裏側からもキラキラするようにとギリギリまで光穴を大きくして、さらに六角形に切り抜いてあったり、葉っぱの模様に似せて作ってあったりと職人さんの技巧が詰まっています。
ハイジュエリーを見る機会があったら、ぜひチェックしてみてください。
微かに曲面になった枠ができました。
上段の方も石型に切り抜きます。
側面は逆プリン型にして傾斜させます。こうする事で、上下段の流れが一つになって、キレイなシルエットになります。
石枠の爪を作る
爪をロウ付けしていきます。
ここが一番の難所です!(気を抜くと全部ロウが溶けてバラバラになってしまう。)
本来は、石座の枠側を爪の形に削ってそこに嵌め込んで作るのですが、今回は初めての方向けに簡略化された方法で作っていきます。
1mm線材の一面を軽く削って平らにして、その面を枠と合わせてロウ付けします。
爪の線材は長めにしておいてください。
穴が開いている耐熱ブロックを駆使して、うまく固定しつつロウ付けします。
ちょっと難しそうに感じますが、案外簡単です。
火の強さはふんわりとしたなるべく細い火で、炙るように熱してください。
上段は3分ロウ、下段は5分ロウで使い分けます。
すでにロウ付けされている箇所になるべく火を当てず、下図の様に外側から温めると良いです。
じわっと溶けたら直ぐに火を離してください。
下段と上段の間に1mm線を入れて、そこにはロウを流さないようにしながらくっつけます。
こうする事で腰の間が1mmになりました。
爪をヤスリで整えてカッコよくしてみました。
断面が台形になる爪にしたかったので太めの線材(1mm)を使いましたが、少し削るのが大変でしたので、そこまで手間をかけたくない場合は0.7mmあたりの材料が良いです。
リングの腕を作る
指を差し込む輪っかの部分を「腕」などと呼んだりします。
まず、いつものように丸くするのではなく、上図のようにU字にしましょう。
作りたいサイズ– #2分小さく作ってください。
次に両端を逆側に返して、タマネギの様な形にします。
タマネギの芽のような部分を、ニッパーで切ります。
ちょこっと先端が上に向いてる感じがポイントで、後々のフォルムを美しくします。
この時点で、横から見たときの歪みがある場合は、木槌などで叩いて直してください。
先程のタマネギの芽のポイントの部分をハンマーで潰します。アンビルなどの丈夫なところで木工用の金槌などで叩いて伸ばします。
騒音や振動があるので、難しい方もいるかもしれません。そういう場合は、材料を3.5mm線などの太いものを使ってみてください。
ちょっと削るのに時間がかかりますが、ヤスリで同じ形に整えられます。
ハンマーで叩いて薄くなっている部分から、徐々に太くなっていく様にグラデーションをつけます。(ヤスリで削って整えます。)
側面を耐水ペーパーで平らに削って、内側もある程度平らにしました。
真鍮のハリガネから出来てるとは思われないフォルムになりました。
先に向かって徐々に細くなっています。
タマネギの芽のポイントがちょこっと飛び出て、エレガントな感じです。
合わせもぴったりに調整していきます。
作りたいリングサイズに合わせていくのが難しい場合は、サイズを小さめに作って、後から内側を削って広げていった方が簡単です。
ぴったりにするのは、難しそうですが、今回は接点が少ないのでそこまで大変ではありません。
石枠と腕をロウ付けする
ロウ付けをします。上下段で接点が分かれているので、計4箇所です。(7分ロウ使用)
真鍮の端材を置いて固定したり、片手でピンセットで抑えながらロウ付けします。
慣れてくると空中でロウ付けができる様になりますので、特訓してみてください。
昔の職人さんは細いチェーンを繋ぐ時も、両手でピンセットで持って空中でロウ付けしていました。
(今はレーザー溶接機という便利なものがあります。)
火を当てすぎると爪のロウが溶けてバラバラになってしまいます。難しい場合は、ロウ付け用石膏や石綿などを使うと簡単になります。
成形・サイズ出し
内側を削って、サイズを合わせます。削りながら整えていくと合ってくると思います。木槌を使うときは慎重に叩いてください。(一番曲がりやすい部分は石枠の部分なので、そこから歪みます。)
どうしてもサイズが小さい時は、石枠と反対側の腕の部分を芯金棒に入れた状態で金槌で叩きます。
伸びてサイズが大きくなります。(金槌で付いた傷はヤスリで削り取ります。)
また、そのままだと若干野暮ったいフォルムなので、ヤスリでカッコ良くしていきます。
こういう石がついているジュエリーは、下に向かって薄くなっていくのが美しいとされています。(付け心地がいいというメリットもあります。)
今回は、一番厚い部分の半分くらいにしてみます。最初にしっかりデザイン画を描いて、その通りに作っていくと失敗がありません。
こんな感じで下に向かって薄くしてみました。
撫で肩の感じが高級感を出しています。
もちろんデザインによって変わってきますので、そこはお好みでアレンジしてみてください。
ピカピカに磨く
真鍮なので、ピカピカにしても数週間で曇ってしまいます。そこまで磨く必要はない気がしますが、一応ピカピカにしました。
隅々まで完璧にピカピカにしたい場合は、ロウ付けの前のバラバラの状態ですべてピカピカにしておきます。
ロウ付けの時もあまり傷つけないようにしながら行います。ハイジュエリーが隅々までピカピカなのは、多くの手間をかけてたくさんのパーツを組み合わせて作られているからでもあるのです。
多分手動で磨くと、休日はそれで終了しますが、リューターがあると一瞬です。
5000円くらいのものでも磨くくらいであれば楽勝です。
二段腰の間は、研磨剤をつけた紐を通してゴシゴシしてください。(やり過ぎるとダレてフォルムが崩れるので注意。)
エメラルドカットの石留め
いよいよ石留です。無理をしすぎたり、力を変に入れるとパリッと割れてしまいますので、慎重にやっていきます。
さきほど受け皿を作るときにある程度合わせましたが、場合によっては上手く石が座らない場合があります。
そういう時は精密やすりなどで、受け皿の部分を削って、深く石がセッティングされるように調整してください。
石が斜めになったり、曲がっていないのを確認したら、爪を軽く内側に曲げて石を仮留めします。
このとき気を付けるのは、対角線上に爪を倒すという事です。
対角の爪を順に倒していくことで、石が斜めになったり、ズレて止まるのを防げます。
次に本留めをします。しかしそのまま倒すと、爪の曲がるときにかかる力の支点が石になっていて、割れてしまいます。下のイラストの様に、爪の先を細く薄くすることで、太い部分と薄い部分の境目で爪が曲がるようになります。
こうすることで、石に変な力がかからないので、割れることはありません。
ここでは完全に爪を倒し切らず、わずかに隙間を開けた状態で精密やすりで爪を整えます。(イラストの③の状態)石にヤスリが当たると傷つきますので、ヤスリの側面をダイヤモンドヤスリや耐水ペーパーなどでツルツルにしておくと気を遣わなくて便利です。
上から見たときにしずく型になるようにしてください。なるべく小ぶりな爪の方がオシャレです。(上図の右下の爪。)
大きすぎると粗雑な雰囲気になってしまいます。(あえて大きくする場合は、形にデザイン性を持たせたり、形をとても丁寧に出したりすることで高級な雰囲気を担保できます。)
爪も色々なデザイン性を持たせることが出来ますので、考えるのが楽しいポイントです!
爪の先がわずかに浮いていると、服の糸などが引っかかって危険なものになってしまいます。お気に入りの洋服がほつれたり、石が取れたりする原因になるのでここは入念に作業します。
ピンセットの取っ手の先や、帯状に切った真鍮板などで、爪の先を折り込んでください。
(本来はぴったり全面が石に沿うのが理想ですが、技術的にすぐに出来る様になるものではなく練習が必要なので、まずは上図のような形が良いです。)
割れそうで怖いかもしれませんが、このくらいなら大丈夫です。(ただ、あまりグリグリと力を入れすぎると割れる恐れがあるので、様子を見ながらやってください。)
きれいに留まりました。アクアマリンはそんなに割れないので、初めての方にもおすすめです。真鍮の色にもとってもマッチしていて素敵です。
ヤフオクや、御徒町の石屋さんでたくさんのルースが売っています。これが出来れば指輪を作ったり、ペンダントを作ったりと制作の幅が広がります。
今回のよりももう少し難易度の低い作り方のリングも紹介しておりますので、ぜひチャレンジしていただけたら嬉しいです!
参考:オーバルカットのルースで自作するシンプルリングの作り方(ガーネット・ローズアメ)
最後までご覧いただきありがとうございました。
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