
石留に必要な道具のリスト【とりあえずこれがあればOK】
彫金の道具はその用途に合わせて個々に道具が存在していて、中には用途が重複していたり、あんまり役に立たないものも多いです。
今回は石留の道具のリストアップしました。お買い物に行く際はこちらを参考にしていただけたら幸いです。
また、使いやすくなるカスタム方法や、100均のものを活用する方法も紹介しています。
石留の基本的な道具(ツメ留め)
時計ヤットコ

時計修理用のヤットコで、通常のものと比べて精密な作りをしています。爪の向きを整えたり、微調整する際に使います。
サイズが色々と存在していて、数字が大きくなるほどサイズが大きくなります。
趣味で行う彫金に関して言えば00〜0番が一本あれば十分で、1番2番と複数サイズを持っていても使用するシーンはあまりないかと思います。数字が小さいほど細いものになります。
価格は1500円前後で殆どの彫金工具店で取り扱いがあります。
S&F(シーフォース)ステンレス時計奴床 #00(990円)
石留めなどの精密作業に使うヤットコです。
大雑把な作業のためのヤットコは100均のペンチで代用できますが、これは専用品を買った方が良いと思います。
サイズもいろいろありますが#00~#0のいずれか一本だけでOKです。(小さい方が良い)
石留ヤットコ

特殊な形状のヤットコで、石枠の爪を倒す際に用います。
通常のヤットコと異なり、余計な部分が当たって傷がつかない作りとなっています。
この道具を使いこなすのはなかなか上級者向けで、初めての方には若干難しいかもしれません。(なくてもOKです
革やフェルトなどのクッションを併用します。
2000円程度で販売されています。
ニッパー

爪を切るときに使います。精密な作業が可能な大きすぎないサイズがおすすめです。
ニッパーは初心者の方でも最高級のものを選びましょう。安いものは咬み合わせがズレていたり、刃が全く役に立たないものが多く、まさに安物買いの銭失いになる可能性が高いです。
最高級と言っても1500~2000円前後の国産のもので構いません。
やっぱり日本製は安心!検品や仕上げがきれいで、欠陥があっても保証が手厚いです。FUJIYAやKEIBAなどのメーカーが有名で、一般のホームセンターでも取り扱いがあります。
KEIBA マイクロニッパー MN-A04 100mm(2,200円)
コンパクトで、刃の持ちも良くかみ合わせも◎の日本製のニッパーです。
真鍮2.5㎜φくらいであれば問題なく切断できます。
安めのものよりも圧倒的におすすめです。
鋭利で薄いタイプの精密ヤスリ

爪を成形する際に使います。
精密な作業が必要なため、おすすめなのは番手#6の刀刃型、笹葉型の先細りになっているタイプなどの鋭利なものです。
12本組に含まれています。12本組セットで買うと7000円程度ですが、バラで購入すると1本800円前後で購入できます。
これは安いヤスリでは役に立ちませんので、趣味用途でもプロと同じものを選ぶべきだと思います。
石留に使う際には、ヤスリの一面を研磨してヤスリ目をつぶしておくと良いです。
ルースにヤスリが当たって傷が付くリスクを軽減できます。
おすすめは日本の老舗メーカーの魚地球印のヤスリです。コスパに優れていて、品質もとても良いです。
魚地球 精密ヤスリセット 10本組 #6(6,724円)
石留や精密作業に適した超微細目ヤスリです。日本製で高品質かつ低価格の魚地球印ヤスリがおすすめです。
セット販売だけでなくバラ売りもされています。
ミル(ナナコ)タガネ&グリップ

先にくぼみが付いていて、爪を丸めて留める際に使います。パヴェ留めなどもこれで留めています。
セットでもバラでも買うことが出来て、実はバラで買った方が若干お得です。セットは3000円前後、バラはグリップが400円前後、鏨が一本100円程度です。
画像右のグリップと左のバーをセットして使います。
0番から20番くらいまでサイズがありますが、趣味用途でやるのであればそこまで小さいサイズは必要ないと思います。(5番以下の爪を留める場合は、顕微鏡がないと厳しい上、そもそもプロでないとその大きさの爪を正確に作るのは難しい)
8番、10番、12番、16番、20番あたりがあれば良いかと思います。
タガネは消耗品ですので、定期的に買い替える必要があります。(潰れてくぼみがなくなってきます)
バラで購入する場合は、グリップは「ミルタガネ用」と書いてあるものを買いましょう。(専用のものは軸受けに金属が埋め込まれています。)
このタガネを改良すればミルグレインも入れることが出来ます。
ピンセット
100均のもので構いませんが、AA型というタイプがおすすめです。
ルースを掴むほか、柄の部分を使って爪を曲げたりする際にも使えます。
固定材

石留はしっかりと石枠を固定すると非常に作業がしやすくなります。
松ヤニや熱可塑性樹脂など色々なものがありますが、洗浄する際の薬品が異なります。
松ヤニはトルエン系のラッカーシンナーなど、他の樹脂はアセトン系(ベンジンなどの除光液に含まれる成分)で溶解・洗浄します。
松ヤニは配合比を変えて粘り気や硬さを変えられますが、アセトン系で溶ける家庭で使用するにはお湯で軟らかくなる樹脂がおすすめです。画像の褐色の樹脂と灰色の樹脂の2種類を持っておくと良いと思います。
赤い樹脂は性質が松ヤニに似ていて、熱湯で軟らかくして木材にセットして、バーナーで炙って使います。
その木材を万力に固定します。


灰色の樹脂は、弾力性がありまとまりが良いので、リングを固定したりする際に使います。
赤いものと灰色のものを1個ずつ購入しておくと良いと思います。
石留の基本的な道具(フクリン留め)
オタフク鎚

タガネを叩くときに使う金槌です。日本の伝統工芸で広く使われていて、特徴的な形状をしています。柄付きと頭と柄のばら売りがあり、趣味用途でしたら柄付きでいいかと思います。
寸や分などの尺貫法単位で種類分けがあり、大きさが異なります。(数字が小さいほどサイズも小さい。分は寸の1/10)
繊細な留めや彫りをする場合は小さいものを使います。刻印を打ったり、打ち出し技法などの力が必要な際は6寸などの大きめのものを使います。
このサイトでは3分(直径12㎜)しか使っていませんが、刻印を打つ際は7分(直径21㎜)あたりが重さが丁度良くて使いやすいです。
特に和彫りをする際は軽いもの(3分)がおすすめです。爪をミルタガネで叩いたりする際にも使います。
伏せこみタガネ

フクリン枠を叩くためのタガネです。
炭素鋼などのタガネ株(自分で先を加工して使うタガネ)で自作することが多いですが、いらないヤスリを加工しても使うことが出来ます。
曲面のものと平面のものと2種類持っておくといいと思います。
タガネ株は平タイプを使用します。赤色の塗料が付いているタイプ(炭素鋼)と青色(ハイス鋼)が付いているタイプがありますが、家庭では赤の方が加工しやすいのでそちらを選びます。
ヘラ(超硬ヘラ推奨)

研磨された鉄の針で、彫金にはかなり重要な道具です。地金をこすると地金がピカピカになります。
鋼鉄製のものや超硬(混タングステン)金属で出来ているものとがあります。
鋼鉄製のものは使用しているうちに擦り傷が付いてくるので、定期的に再研磨が必要です。
超硬ヘラはメンテナンスフリーなので楽なのと、鋼鉄製のものより良く光ります。
彫刻台・万力

彫金用途の万力は達磨のような形状(実際に達磨という名称で呼ばれることもあります。)の彫刻台という道具を使います。
前述の固定材と合わせて使うことで、確実にタガネの衝撃を地金に伝えることが出来ます。
色々なサイズがありますが、直径が15cm前後、重さ10kg前後の重めのものをお勧めします。ミニ彫刻台は安いですが、金槌でタガネを叩くと重量が足りずに動いてきてしまいます。
ベアリング内蔵のものはスムーズに回転するため洋彫りに使われます。多くのものがストッパーが付いていて回転しないように固定ができるので、ベアリング内蔵の方がお得だと思います。
結構高価な彫刻台(4万円~10万円)ですが、近年は中国製の安価なものが普及してきているので、2万円しないで購入できるかと思います。
通常の万力でも代用はできないこともないですので、数千円の万力から始めてみても良いかもしれません。
道具のカスタマイズ方法
固定器具の自作

爪留めなどでも固定器具があった方がはるかに楽に作業ができます。100均で売っているすりこぎ棒などの木の棒を使って、簡易的な固定器具を作ってみます。
すりこぎ棒を切る

100均ではDIY用の木の棒なども売っていますが、多くが桐やバルサなどの軟らかい性質のものが多いようです。その点すりこぎ棒は用途から見ても硬さが必要であることが予想できるため、硬い木材で作られています。
長さもとてもちょうどいいですが、先が丸くなっているので、糸鋸やのこぎりなどで切っておきます。
固定材をつける

GCモデリングコンパウンドを付けましたが灰色のヒートフォームという樹脂をつけてもOKです。
いらない容器(樹脂がこびりついて取れなくなります。)で湯煎すると軟らかくなってくるので、切った面に盛ります。

直ぐに取れてしまう場合は、すりこぎ棒の切った面を荒らしてホールド性を高めておきましょう。

バーナーで炙る

バーナーで焦がさないように炙って、トロっとさせておきます。手にかかると火傷しますので気を付けてください。
石枠を固定する際も、石枠をバーナーで少し温めると余熱で溶けて固定材に埋まっていきます。
水につけて冷やします。外すときも湯煎したりバーナーで軽く炙って外します。アセトンで洗浄すると綺麗に落ちます。
石留用の精密ヤスリの改良

通常の精密ヤスリの一面のヤスリ目を研磨して潰すことでルースに傷をつけずに爪を整えることが出来ます。
100均で売っているダイヤモンドヤスリは、焼き入れがされている硬い鋼でも削ることが出来ます。これを使って、刀刃型ヤスリの峰のヤスリ目やバリを削り取ってきれいにしておきます。
#1000くらいまでペーパーなどで磨いておきます。#1000くらいまで磨いておけばOKですが、気になるようであればリューターを使って研磨剤とフェルトでピカピカにしても良いと思います。
爪を整える際は、この研磨した面をルース側にして使います。
まとめ
石留の道具の一覧を紹介しました。
取敢えずこのサイトで紹介しているものは、この道具があれば作ることが出来ます。色々やっていると自分に合った道具のヒントが見つかると思います。
参考にしていただけたら幸いです。