今回は小ぶりなオーバルカットのルースを指輪に仕立てる手順をご紹介します。
ミネラルショーなどで、すごくきれいな石を買えたりすると眺めているだけでも楽しいですよね。特に色のついている石は、1つとして同じものがないので同じ種類の石でもたくさん集めてしまいます。
このガーネットは内包物も多くて、中にヒビもたくさんあるのですが、ヒビが光を反射してとてもきれいです。
宝石としての価値は皆無かもしれませんが、きれいなことには変わりません。
自作でこういう石をアクセサリーに仕立てられると、また違った宝石の楽しみ方ができると思います。
せっかくなので、シンプルな構造だけどスタイリッシュに見える2つのパターンの作り方を解説していきます。
オーバルカットのルースで自作するシンプルリング 完成イメージ
必要な道具と材料
使用する道具
彫金の道具一式が必要です。リューター(ハンドグラインダー)があると、細かい作業も、磨き作業も簡単にできるようになります。
1万円台のリューターで構いませんので、持っておくと良いです。
道具についてはこちらの記事で解説しています。
使用する材料
材料は3種類の真鍮を使います。赤い石のガーネットの方はBとCのみ、ピンクのローズアメジストの方がA、B、Cを使います。
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ルースの大きさやカットはお好みでOKですが、カットによって石枠の作り方や留め方が少々変わってきます。
カット別の石枠の作り方は下の記事からどうぞ。
ペアシェイプカットの石枠の作り方と石留の手順
プリンセスカットの石枠の作り方と石留の手順
マーキスカットの石枠の作り方と石留の手順
オーバルカットの石枠の作り方と石留の手順
ラウンドブリリアントカットの石枠の作り方と石留のやり方
オーバルカットのルースで自作するシンプルリング の作り方
ルースをトレースする
まずは方眼紙などにルースの輪郭をなるべく正確に写します。コピー機でルースをスキャンして等倍で印刷する方法でもOKです。(印刷した後は必ず等倍かどうか確認しておいてください。)
材料の切り出し
必要な材料をカットしておきます。ガーネットの方は石枠を2.0mmφ丸線材で作るので40mmくらいの適当な長さにニッパーで切っておきます。
ローズアメの方の石枠は板材から作るので、石のキューレットまでの長さ+1mmくらいの幅で糸鋸で切っておきます。
焼き鈍し(やきなまし)
このままでは材料が硬すぎて曲げずらいので、一度バーナーで赤くなるまで加熱→水で冷ます作業をしておきます。(この作業を焼き鈍しと呼びます。)
丸ペンチで材料を曲げて合わせる
先ほどトレースした図に合わせて、丸ペンチで材料を曲げていきます。ルースよりも小さい枠にしたいので、線の内側に巻いていきます。
ルースよりも石枠が小さいと、正面から見て石枠が隠れるので、石がよりキレイに見えるようになります。
曲げているうちに硬くなってきたら、都度焼き鈍しをしておきます。
定期的に図に合わせながら曲げていくようにします。
曲げにくいときは、木槌でたたいて調整すると簡単です。
曲げ始めのところはどうしてもまっすぐ気味になってしまいますので、切り落としてしまいます。
糸鋸の刃のギザギザを上向きにセットして切ります。手を切らないように気を付けてください。
ある程度のところで余分を切っておきましょう。
最後はぎゅっと閉じて両端を合わせておきます。
ぴったり合わせるのは難しそうに見えますが、だいたいでOKです。はみ出た分は後でヤスリで削り落とせます。
形はこの時点ではゆがんだままで大丈夫です。ロウ付け後に整えます。
ガーネットの方は丸線材で作るので、同じように丸ペンチで曲げておきます。
余裕があれば、切れ目の位置を爪の位置に合わせられると良いです。こうしておくと、ロウ付けの跡が爪で隠れてスマートです。
枠のロウ付け
巻いた枠をロウ付けします。ロウ材は真鍮ロウを使っています。ロウ付け後は酸洗いをしておきましょう。
枠の形を整える
ゆがんでいる枠の形を整えます。丸ペンチを差し込んで、奥の方で挟んでカミカミすることでカーブを均すことができます。
このくらいでしょうか。あとはヤスリで削って形を整えます。
両面を金属用の紙ヤスリで平らにする
両面を金属用の紙ヤスリで平らにします。紙ヤスリは100円ショップで色んな粗さがセットになって売っているものが便利です。(灰色っぽかったり黒っぽいものが金属用です。)
ここでは#600を使っています。
ヤスリで枠の形を整える
ヤスリを使って枠の形を整えていきます。小さいと持ちにくいかもしれません。より簡単に削るには『ハンドバイス』や『並行プライヤー』を使うと作業がしやすいです。
内側は精密ヤスリで整えます。持ちにくいので先述のハンドバイスやヤットコで持つと良いです。
横から見たときに台形になるように削ります。
ローズアメの石枠の方は下側を丸めておきました。
ヤスリが終わったらバナナサンドペーパー(ペーパーロールサンダー)#600でヤスリ傷を消しておきます。
線の内側になるまで削りました。ルースをのせてみて石枠がはみ出してないかを確認しておきます。
内側をスロープに削る
ルースの座りがよくなるように内側をスチールバーでスロープに削ります。
爪を立てるための溝を入れる
爪をはめ込むためのガイドとなる溝を入れます。精密ヤスリで入れても良いですが、リューターをお持ちであればスチールバーで削ると早いです。
Buschスチールバー No.23 ヘリコイダル 1.0mm
U字に曲げた丸線材を差し込む
爪をロウ付けするために丸線材をU字に曲げて差し込みます。先ほどの溝にカチッとはまって固定されるので、ロウ付けが簡単になります。
爪のロウ付け
そのままそっとロウ付けします。量が多いと汚くなるので、少し小さめの1mm角くらいの大きさの真鍮ロウを使います。
余分をカットしておきます。ルースを留める側は長めに残しておきましょう。
石枠のブラッシュアップ
シリコンや精密ヤスリで任意の形に石枠を整えておきます。
ローズアメの方は照り返し(光が反射する面)を削っておきました。ここを磨くと、ルースの反射が強調されてより輝いて見えるようになります。
丸線リングを作る
ここでは丸線リングの作り方は割愛します。別記事で解説しています。
ガーネットの方は石枠の光穴(石枠の真ん中の穴)の部分に合わせて、精密ヤスリで削っておきます。
こうすることでルースのキューレット(下のとんがり部分)がリング部分に干渉しなくなります。
ローズアメの方は石枠の幅の分を切り取って、ぴったりはまるように調整しておきます。
石枠とリングのロウ付け
両方のパーツをくっつけます。真鍮ロウでも可能ですが、7分銀ロウ材の方が流れやすいので難易度は低いです。終わったら酸洗いをしておきます。
固定が難しい場合はロウ付け用石膏や石綿・イソタップなどの固定補助材を使うと簡単です。
逆ピンセットと合わせて使うと使いやすいです。
これについては今度詳しく記事にできればと思います。
全体を磨く
全体を#600の紙ヤスリできれいにしておきます。
このまま艶消しな感じで完成するか、ピカピカにするかはお好みです。
ピカピカにする場合は、フェルトに研磨剤#4000を付けて全体を磨きます。
S&F(シーフォース)フェルトホイール 樹脂入 Φ20 ハード
細かいところはマンドレールに牛乳パックを丸く切ったものを取り付けて、#4000を付けて磨くとピカピカになります。
ルースの石留め
いよいよ石留めをしていきます。落ち着いて作業すれば石を割ることもあまり無いと思います。
気を付けることは、力任せにやらないことと、様子を見ながら作業することです。
石を座らせて、爪を折り曲げて留める作業ですが、なかなか爪が曲がってくれないことがあります。こういう場合、力任せで曲げようとするとだいたい失敗してしまいます。(彫金に限らず、力任せって危険ですね。)
ちょっとビビり気味で作業すれば大丈夫です。うまくいかなくてムカつくこともあるかと思いますが、そういうときはおやつタイムを取ってみてください。
1.爪を開いてルースを座らせる
まずは時計ヤットコなどで爪を開いて、ルースを石枠に座らせてみましょう。
次にガードルに接する爪の位置に印を入れます。カニコンパスを使っていますが、尖っているものなら何でもいいです。
ガードルは赤矢印のところです。
ハープ HARP No.NA2 カニコンパス全長90mm 彫金 工具 No.NA2
2.スチールバーで刻みを入れる
スチールバーや精密ヤスリで印の位置に刻みを入れます。
Buschスチールバー NO.414 ベアリング 1.2mm
思い通りの位置で爪を曲げるしくみ
ペーパークラフトなどで厚紙を正確に折りたいとき、カッターで線を引いたことがあるかと思います。
カッターでちょっとだけ切れ目を入れることで、そこから折れますよね。爪もそれと同じです。
金属も一番強度がないところから曲がりますので、狙った位置を薄く削ったり、刻みを入れて折れやすくしてあげる必要があります。
こうすることでルースに余計な力がかからなくなり、安全に石留めができるようになります。
その次に刻みの上をヤスリで平らにしておきます。
3.ルースをはめて余分な爪をカット
ルースをはめてしっかり座ったら爪の余分をカットします。写真では内側に爪を折っていますが、寄せるくらいでOKです。
石の高さと同じくらいのところでニッパーで切ります。
4.爪の成形
爪をヤスリで整えていきます。本来は石をはめたまま行うのですが、ヤスリが当たると石が傷つく恐れがあるので、落ち着いて作業ができるように石を外してみます。
爪を左右から削ると尖った形になります。
5.ルースを戻して爪を倒す
ルースを戻して爪を寄せたら、先まで爪を倒していきます。
石留めヤットコでぎゅっとつまむと、爪が先まで曲がります。うまく曲がらない場合は、爪の外側を削って肉を薄くします。
石留めヤットコには革切れなどを張っておくと作品に傷がつかなくなります。セッティングのやり方は下の記事で解説しています。
6.爪を磨く
最後に爪を磨きます。牛乳パックなどの紙パックを丸く切ったものをマンドレールにつけたものに研磨剤#4000をつけて磨きます。
石の種類によっては石が削れてしまうのであまり当てないようにします。やわらかい石の場合は留める前にピカピカにしておいて、留めた後はささっと磨く程度に留めておきましょう。
これで石留めは完了です。
爪を丸くしたい場合は尖らせる代わりに丸く削っておきます。そのあとは同じように時計ヤットコで押さえればOKです。
仕上げの研磨
仕上げは研磨剤#8000を豆バフにつけて磨きます。よく洗浄したら完成です。
オーバルカットのルースで自作するシンプルリング 完成
ということでオーバルカットのルースをシンプルな爪留めにしてみました。これをベースにして、ここに飾りを付けしたり、模様をあしらったりすることでより自由な作品に変えることもできると思います。
ぜひお手持ちのルースをリングに変えてみてはいかがでしょうか。
最後までお読みいただきましてありがとうございました。
次は…ルースをフクリン留めしたリングを作ってみようと思います!お時間ございましたらこのサイトへまた遊びに来て下さるとうれしいです!
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