ものづくりを生業にする人なら、必ず持っている計測機器であるノギス。
ステンレスなどの金属製で、0.01mm~0.05mm単位で、厚さ・深さ・内径を正確に計測できるツールです。
ノギスについての注意点

ノギスは一風変わった定規のような見た目で、とても精密に作られています。
乱暴に扱ったり、嘴のようになっている部分を叩いたりすると使い物にならなくなります。
また、ステンレスなど錆びにくい金属でできていますが、もらい錆びや酸性のものに漬けっぱなしにしておくと錆が出て使えなくなってしまいます。
作品の寸法が正しく計測できないと綺麗なものを作ることが出来なくなってしまいます。特に大切に扱いましょう。
目盛りの読み方

一番大きな嘴の部分で測ります。
上図の様に図りたいものを先の方でしっかりと挟みます。
0-10-20—と続くメインの目盛りの下に0-1-2-3-4—とスライドで動く目盛りが振ってあるかと思います。
スライドで動く目盛りの0の線が指している先の、メインの目盛りが品物の寸法です。

メインの目盛りにぴったり合わない場合は以下のように読みます。

まず、スライド目盛りの0の線がどこにあるのかを見ます。
メインの目盛りの8mmの線を越えて、9mmとの中間あたりを指しています。


続いて、スライド目盛りを見渡してみると6の線が、メインの目盛りとぴったり合っているのがわかります。
つまり、「8mmと0.6mm=8.6mm」が測定結果となります。
その他の使い方
厚さのほかにも深さや内径を計測できます。
内径・隙間の幅

内径や隙間の幅などを量りたいときは小さい方の嘴を使います。目盛りの読み方は先ほどと同様です。
深さ

溝や穴の深さも図ることが出来ます。
大きな嘴を広げると、底から棒が出てきます。この棒の長さと、嘴の開き具合が連動しています。
失敗しない買い方
名のあるメーカーのものを選ぶ
ノギスは精密さが命です。稀に嘴を閉じた状態で、0の目盛り同士の勘合があっていなかったり、作りが粗雑なものがあります。
特に小さいサイズのものに多いのですが、メーカー印が入っていないものは避けた方が良いです。
絶対間違いない一押しメーカーは、ミツトヨという100年くらい測定機器を作り続けている日本の老舗メーカーの「M形標準ノギスN」です。
視認性の高い文字やデザイン、仕上げ精度も高く仕事の相棒です。
標準ノギスでも、他社製品よりも2000円くらい高いですが(5000円前後です。)その価値はあります。
他には、中村製作所(KANON)などがあります。現在はミツトヨに比べあまり流通していませんが熟練の職人さんも使っているメーカーです。
素材は金属製(ハードステンレス)一択
プラスチック製は避けた方が良いです。プラスチックは作品に傷がつかないので良いですが、熱や弱い衝撃でゆがんだり伸縮する為役に立ちません。
とはいえ100円ショップでも簡易ノギスとして売っていますので、まぁ100円なら…と買ってみてもいいかもしれません。日常生活でそんなに正確に測らなくていいシーンでは割と便利そうです。
オススメサイズは150mm
サイズは300mmや100mmなど色々ありますが、150mmが一番便利です。
業種問わず今まで会った職人さんは150mmタイプを使っている方が多かったです。(旋盤工、溶接工、実家の近所の町工場のおじさん…etc)
熟練職人のおじさんが、ワークをノギスで測っている姿はかっこいいですね。
ミニノギス・マメノギスみたいなものもありますが、’05単位の視認性が悪く、デジタルノギスで測り直すと少し誤差が目立ちます。
また、小さいのでどうしてもパーツ精度が下がり、通常の大きさの精度に劣ります。
見た目がミニマムなので可愛くて取り回しも良く便利ですが、こだわりがなければ通常サイズが良いでしょう。
デジタルノギス
さらに正確に測る際はデジタル式のものもあります。
アナログノギスは0.05mm単位までしか計測できませんが、デジタルは0.01単位での計測が可能です。
えーっと…といちいち目盛りを読まなくても、でかでかと液晶に寸法が出るので、作業効率もUPします。
それならデジタルノギス一択でいいじゃないか!と思ったかもしれませんが、そうは問屋が卸しません。
しっかりしたデジタルノギスは、1.5万円~くらいからです。
ミツトヨ(Mitutoyo) デジタルノギス ABSデジマチックキャリパ CD-15APX
電池式ですが、しっかりした品質の一流品です。電池も長持ちなので毎日使っても2年くらいは持ちます。(カタログ値は3.5年)
ソーラー式のデジタルノギスで、電池交換の手間から解放されます。こちらは150mmではなく100mmモデルです。
アマゾンでも中国製のものが2000円くらいで売っていますが、安物買いの何とやらとなってしまいますので、デジタルを買うなら名の通った有名メーカーのものが良いです。
電子秤も作っている大手メーカーのA&Dのノギスです。作りの頑丈さ、工作精度、質感はミツトヨには劣りますが、計測精度は問題ないです。
2000円くらいの中国製デジタルノギスを買うのであれば、アナログ式の良いものを買った方がいいと思います。
手入れ方法
買った時についてくるノギスケースに入れるのがおすすめです。
また、スライド部分が硬くなってきたらミシン油をさしておくと良いでしょう。
ほとんどがステンレス製ですのでさびにくいのですが、もらい錆びをしてしまいます。(スライド内部のバネが真鍮製なので緑青が出る可能性があります。)乾燥した状態を保ってください。
付属のポーチにしまって、折れやすい箇所を保護しましょう。
デジタルノギスは使用後に空拭きして、付属のハードケースに収納します。
ジョーやクチバシ部分が変形すると数日落ち込むことになりますので、心しておいてください。
ノギスも消耗品
いいノギスでも数年使っていると、温度変化や摩耗で精度が落ちてきてしまいます。趣味でなら良いのですが、商売として使っていくとなると色々と支障が出てくるかと思います。
新しく買い替える、という手もありますが、旭テクノという校正業者に出すと、厳しい基準に合わせて丁寧に誤差修正をしてくれます。(対応機種・対応範囲があります。)
アナログノギスであれば、新しく買い替えてしまっても良いかもしれませんが、高価なデジタルであれば定期的に校正に出すことで、機器の寿命を延ばすことが出来ます。
少々割高(倍くらい)ですが、校正業者から校正済ノギスも購入できます。ミツトヨがJIS1級の精度基準で作り検品したものを、さらに校正業者が厳しくチェックするというとんでもなく手間のかかったものとなります。ただ、ジュエリー製作では時計技師やF1マシンメカニックみたいな精密さは必要ないので、持て余してしまうかもしれませんが、周りに自慢できそうですね。

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