金属を削ったり磨いたりするのに、必要不可欠な道具であるハンドモーター(リューター)。
特に研磨の作業では、手動よりも圧倒的に時短になります。(2時間の作業が5分で終わったり。)
忙しくて作業時間が確保できない人にこそ導入してほしい道具です。
ネットで調べてみると、有象無象のハンドモーター(リューター)がヒットします。自宅で、趣味で彫金を楽しみたい人は何を選べばいいのか?どういう基準で選べばいいのかを解説します。
実際に私が使って、これは良いと思ったものだけに絞って紹介します。蘊蓄が多めになりますので、少し長くなりますがお付き合いいただけますと幸いです。
おすすめのハンドモーター(リューター)も松竹梅で予算別に紹介しております!
ハンドモーター(リューター)を選ぶ絶対条件は以下の通り
- 軸径が2.35mmであること
- ハンドピースと本体が分離している
- できればフットスイッチがあると嬉しい
- プラチナをがっつり磨きたいのならハイパワーが必要
ひとつずつ説明していきます。
リューターの選び方1:軸径が2.35mmφであること

軸径というのはリューターの先っぽに取り付けるドリルやフェルトなどの道具(リューターポイント、先端工具などと呼ばれています。)の軸の太さのことです。

彫金の道具屋さんで売っているリューターポイントは太さが全て2.35mmφで統一されています。
対してリューターの方は2.35mmφの他にも3.0mmφなどがあり、間違えて買うと悲惨です。
※救済措置として、3mm→2.35mmにできるスリーブが売っています。しかし毎回毎回ポイントを変えるごとにスリーブを抜き差しするのは激しく消耗します。
また、機種によっては3mmのチャックを後から2.35mmに変えることもできますが、+5000円~10000円程度かかります。
ここだけは絶対に押さえておいてください。
リューターの選び方2:ハンドピースと本体が分離している

ハンドピース(持って作業するペン型の部分)と本体(スピードを調整したり、電源スイッチがある部分)が分離しているタイプは、ハンドピースがスリムで使いやすいです。
リューターのポイントは0.5mmの細さのものもあります。ぶっといハンドピースだと力加減の調整が難しく細かい作業で難儀します。
(超極太サインペンの先が0.3mmのペン先だったらどうでしょう。ちょっと力んだだけでペン先が潰れそうで、繊細な絵を描くのは難しそうですよね。そんな感覚だと思ってください。)
また、故障した際にはハンドピースだけ修理に出したり、買い替えたりができるので、経済的でもあります。というのも、磨き作業などで粉塵がリューターに入り込み、内部のベアリングに詰まって故障することがあるためです。
そういう際に部品交換で済むのはメリットです。
デメリットとしてはちょっと値段が高いことです。ピンキリですが一体型は5000~14000円くらいですが、分離型は12000~くらいになります。
リューターの選び方3:できればフットスイッチがあると嬉しい
フットスイッチとは足でリューターの回転をオンオフできるスイッチです。フットスイッチにも複数のタイプがあって、踏むとただ電源がオンオフされるタイプと、車のアクセルのように踏み込み具合によって回転スピードを調整できるタイプがあります。
フットスイッチがなくても作業は全然できますが、リューターポイントを変える際に、いちいちリューターを置いて→手を伸ばしてスイッチをオフにして→ポイントを付け替えて→またリューターを置いて→スイッチをオンにすることになります。
踏んでオンオフタイプでは、回転数の調整は本体側のツマミで調整します。
車のアクセルタイプはオンオフはもちろん、踏み込み具合で速度を調節できるので直感的な作業ができます。
磨き作業では、高速で一気に磨き取りたいシーン、仕上げに低速でゆっくり磨き上げたいシーンなど色々な回転数を使い分けるのでアクセルタイプは重宝します。
しかし、アクセルタイプはリューター回転数を変えずに低速を維持するのが難しく、ややピーキーな操作になりがちです。パヴェをたくさん石留めするときなどには、ゆっくり一定の速度で長時間回すことが多いので、アクセルタイプのフットペダルでは足を攣りがちです。
そういう時はフットスイッチを使わないことも可能です。(大体のリューターにはFOOT/HANDの切り替えスイッチがついていて、リューターによっては裏側にスイッチがあります。できれば前面パネルにスイッチがあるリューターだと使いやすいです。)
オンオフタイプかアクセルタイプかは完全に好みです。優劣はありません。
リューターの選び方4:プラチナをがっつり磨きたいのなら高いのを買う

高いリューターと安い物の違いはモーターのトルクです。力強いトルクがあると、作品に押し付けるように使っても回転スピードが遅くなったりすることがありません。
高いリューターには、モーターに負荷がかかった瞬間に機械が感知して、瞬間的に出力を上げて回転を維持するフィードバックシステムがついていたりします。
粘り気の強いプラチナを磨くときは特に重要で、トルクの低いリューターを使うと回転が止まってしまって作業効率が下がります。プラチナを磨いたり、商売レベルでたくさん研磨をする必要がある場合は最低でも5万円以上のリューターを選ぶと無難です。
ですが、シルバー・真鍮・金などであれば、安いものでも十分使えます。趣味レベルでの作業がメインでしたら、リューターはそこそこにして、浮いた予算を超音波洗浄機(これも超便利)に割り当てることをおすすめします。
おすすめのリューター
以上の選定基準を踏まえて、予算別に選定しました。ジュエリー職人として実際に使ってこれならおすすめできるというもののみに絞っています。
松竹梅と、中古で探すときのおすすめモデルをご紹介します。
梅:2万円以内の低予算リューター

今回ご紹介する中ではハッキリ言ってこれが一番おすすめです。価格・信頼性・アフターサービス・性能すべてのバランスが良いです。
2.35φ(3mmφも選べる)のワンタッチ式ハンドピースと本体分離型のリューターで、日本のメーカーのものです。
フットスイッチはON/OFFタイプ、ハンドピースも結構高級な作りをしています。これが2万しないで買えるのはかなり衝撃です。

なななんと!セーフティグラス、ダイヤモンドポイントセット、(それと普通のマスクが1枚)付いてきます。日本企業らしい配慮というか、とりあえず安全に使えるようにしてくれているサービス精神を感じます。このダイヤモンドポイントは地味に嬉しいです。作品を削るときには目が荒すぎて使えないのですが、ダイヤモンドの粉が付いているのでどんな硬いものでも削ることができます。

白蝶貝・マラカイトやラピスラズリの荒削りや、彫金道具の改造をする際に重宝します。私は以前に1500円程度払ってわざわざこれだけ買いましたが、最初からついてくるなら嬉しいです。
1つ前のモデルが14000円程度でよくフリマアプリで出品されています。性能はあまり変わらないでしょうから、中古を探すのも良いと思います。リセールバリューも地味に良いのが素晴らしいです。





ハンドピースはかなり高級感があります。精度は申し分ないです。先端の方が握りやすいように面取りされていて、滑りにくくて安定します。

回転は非常に静かで精密です。今の時代にこれが2万円以下で購入できるのは素晴らしいです。

#600の紙やすりのあとから、仕上げ用研磨剤#5000で磨いてみました。
低速(速度ダイヤルの1/5以下の領域)はちょっと非力で、力を入れると止まってしまいますが、回転を少し上げればストレスなく磨けます。
竹:彫金道具屋さんのエコノミークラスリューター
入門機以上〜中堅クラスのリューターです。価格にして4万円〜6万円程度のものです。まあ、これだけ出せば問題なく使用可能です。プラチナもしっかり磨けます。
彫金工具屋さんのオリジナル商品も多く、その場合は基本的にメンテナンスはそのお店でしか受け付けてくれません。手厚いサポートを受けられる点はメリットです。多くの場合、ハンドピースだけの追加販売もしてくれます。
この記事では私が使ったことのあるものだけ紹介していますので、他にも良い選択肢があるかもしれません。その点はご了承ください。
シーフォースの中堅リューターです。このクラスの中では一番安く、バランスのいいリューターです。セールなどで定価より安くなっていたら買いです。
ただ、趣味程度の使い方ならアルゴファイルで十分だと思います。趣味ユースで使い心地の差を体感できるほどの差はあまりないです。
アルゴファイルのを購入しておいて、余ったお金を貯めて超音波洗浄機を導入するのがおすすめです。
安く買うコツ
彫金工具屋さんは年に数回セールをすることがあります。年度末の決算時期やクリスマス時期などは狙い目です。特に3月末あたりの決算時期はデモ機(店舗展示品)の放出があったりして、半額程度で買えることもあります。彫金工具屋さんのSNSをフォローしたり、オンラインサイトを定期的にチェックしておくと良いです。
他のおすすめ機種
鈴峰:ユーロスタイル スタンダードセット H400( SU322A+SMG-H400)
彫金工具屋の鈴峰さんオリジナルの7万円台のリューターです。普通にいいリューターですが年々価格が上がっています。数年前は4-5万円くらいだったような…。滑り止めのグリップがトゲトゲしていて長時間握ってると手が痛くなるのが欠点です。3月の決算時期セール時期にデモ機などが安くなることがあるので、3万円を下回るようであれば買いだと思います。
松:ハイエンドクラスリューター
趣味レベルでは不要ですが、一応ハイエンドモデルについても紹介しておきます。プロの現場では一日中リューターを連続稼働させるため、すぐにモーターの寿命が尽きてしまいます。リューター停止=仕事が止まるということですので、耐久性も求められるわけです。ハイエンドモデルでは高精度なことはもちろん、軸ブレが全くなかったり、ブラシレスモーターを搭載していたり、高機能なマイコンが搭載されていたりと納得の品質となっています。
ハイエンド2大巨頭
定番です。10万程度です(フットスイッチは別売りで1万円程度)。一台に2つのハンドピースを接続できます。(同時使用は不可)。ハンドピースはトルクタイプとスピードタイプと2種類選べますが、どっちを選んでもトルクフルです。ハンドピースだけの価格は6万円程度で、修理代も高いです。(状態によるが2-3万円程度)
こちらも老舗メーカーの定番です。昔のは縦長の形をしていましたが、かっこよくなって新登場しました。ブラシレスモーター搭載で、URAWAよりハンドピースが若干細くてコンパクトです。ハンドピースの先端がアタッチメント式で、歯医者さんが使っているような形の角度付きのタイプにも交換できます(彫金には使いませんが)。ハンドピースの高級感がたまりません。
ダークホース枠
老舗歯科技工機器メーカーの長田電機工業株式会社が作っているリューターです。
なんといってもデザインが良いです。サイコロのような可愛い見た目をしていますが性能も値段もハイクラスです。価格は20万円程度です。
本体が緑色ではなくて銀色のモデルも見たことがあります。ハンドピースがレバーでポイントを切り替える方式ですが、個人的にはレバーの出っ張りが気になるので、シームレスな捻り式の方が好きです。見た目は一番好きです。
ハンドピースが20mmφ以下という脅威の細さと、びっくりするくらいコンパクトなコントローラで構成されたリューターです。ここカーボンにする必要ある?というところまでカーボンファイバーをふんだんに使った、豪華絢爛な造りをしています。お値段20万円程度です。
一番強力なモデルはトルクは強すぎて、抑えている手が辛くなります。30mmφくらいの太さのハンドピースで育った自分には17mmφは細すぎて逆に使いにくく感じました。(慣れなんでしょうが。)リューター界のフェラーリみたいな存在です。
中古でおすすめのモデル
ネットオークションやフリマアプリで中古品を探すのもありだと思います。あまり年季の入っているものだと、モーターがダメになっていたり接触不良や漏電、パワー劣化の可能性も否めないので、見た目がキレイめなものを狙いましょう。激しく黄ばんでいたり、ケーブルがボロボロなものはやめておいた方がいいです。
TP’sシリーズ
かつて色々な工具屋さんで販売されていた5万円台クラスの中堅リューターです。無印からII、IIIとバージョンがあり、新しい方が高性能です。結構球数が多いのでフリマアプリでもよく見かけます。全バージョンでフットペダル対応(アクセルタイプ)で、時計回り、反時計回りの切り替えもできます。無印でしたら8000円以下、II、IIIは15000円以下ならお買い得です。『TP’s リューター』『TPC リューター』などで検索します。Iはやや非力な印象です。
Mini=Montor ミニ・モンター
よくわからない銀色のケースのリューターです。Mini MontorとかJOYFUL HOBBYとか色々な名前のバージョンがあります。しかし実は日本製で、裏面にYaesuというメーカーロゴが入っています。そして、TP’s IIと全く同じ形をしています。たまにネットオークションで出回っているのですが、2000-5000円程度とかなり安い価格で売っています。私も以前、ネットオークションで2000円で購入したものを持っていますが問題なく使えています。Mini=MontorやYaesu リューターなどと検索するとヒットします。
リューター(ハンドモーター)の選び方 まとめ
ということでリューターの選び方について解説しました。とりあえず絶対に押さえておきたいところは軸径です。2.35mmφのリューターを選ぶ、ということを覚えておいていただけたらと思います!
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結論としてはこれが一番価格と性能のバランスが良いと思います。ご参考いただけたら幸いです。
