このページでは、ラウンドブリリアントカットの石枠の作り方と石留めのやり方を解説します。
銀の板材と丸線材から初心者の方でも比較的簡単に作れるやり方を紹介しています。
参考:自宅で金と天然ダイヤの指輪を作る手順(K18のロウ付け・ダイヤを割らずに留める方法)
必要な道具と材料
基本の彫金道具にプラスして、石留めの道具が必要です。
石留めの道具で今回使うのは、下の道具だけで全部で2000円しないくらいでしょうか。石枠の石留めはこれだけあれば留める事ができます。
- 石枠を固定する自作道具(作り方は#固定具をご参照ください)
- ナナコタガネ(大きめのもので#13-#16あたりを揃えておくと良いです。1本100円くらいです。)
- ナナコタガネ専用グリップ
- ピンセット(100均のヤツでOKです)
- 精密ヤスリ(魚地球印の”刀刃や笹刃”と”半丸(甲丸)”がおすすめです)
上のリストの道具の作り方や選び方は、こちらで詳しく紹介しています。
材料の用意
・キュービックジルコニア:φ10㎜ラウンドブリリアントカット
・銀材SV950 :1.2㎜×4㎜×60㎜(角線材)、φ1.2㎜×60㎜(丸線材)
直径10mmのラウンドブリリアントカットのCZ(キュービックジルコニア)で作ります。
キュービックジルコニアのECサイトで購入しました。色々なカットやサイズがあって、値段もそこそこなので、練習用にはもってこいだと思います。
銀材は1.2mm×4mmの角線材、爪用に直径1.2mmの丸線材を使用しています。
角線材は圧延ローラーで引きましたが、シーフォースさんから1.2×4×500あたりの角線材が出ていましたので、こちらを用意しておくといいと思います。
フクリンや枠にも使えるオールマイティなサイズです。
ただし15mm以上のルースの枠を作るにはちょっと薄すぎるので、その場合は1.5〜2mm厚くらいの角線材がいいかなと思います。
丸線材は全てのサイズを揃えるよりも、線引き板を購入するとお得です。好きなサイズの丸線材を作れるようになります。
S&F(シーフォース) 超硬線引盤 丸 小 0.26-2.80mm
先を尖らせておいた線材をこの穴に通して引っ張ることで、自在に太さを変えられる道具です。
安いものもありますが精度が悪く狙った太さにできない事がありますが、使えないわけではありません。
角線を引けるタイプもあります。
ラウンドブリリアントカット 石枠の作り方手順
紙に石枠のサイズを書く
現物合わせで作るよりも、設計図となるガイドがあった方が安心です。
石の直径をノギスで測ったら(なかったら定規の上に置いて測るのでもOKです)、石の直径と同じくらいの円を描きます。
「10mmの石」を買ったからといってØ10mmであるとは限りませんのでご注意ください。(特に色石ほど誤差が大きいです。)
板を丸く石枠に合わせて曲げる
板材を先ほど紙に書いた円の線の内側(紙の円より一回り小さくなるように)に合わせて丸めていきます。
少しはみ出してしまっても、削ればOKです。(ただし削った分小さくなるので注意)
板材は切らずに、長いまま丸めて行った方が楽です。
円のガイドとして細い芯金棒や、サイズが同じドリル刃のお尻などを使うとよいです。(ドリル刃はマスキングテープや布などで刃の部分を保護します。手で触るとキケンです。)
最初から完全な正円にするのは難しいので、この作業はある程度で終わらせて、細かいところはロウ付けしてから整えるようにします。
丸める途中で、「端の丸め始めの部分」をカットします。
端の丸め始めはしっかりと丸くできていないと思います。ペンチなどで掴んでいたので、ちょっと平らになってしまうものです。
カットして、しっかり丸まっているところを使います。
ロウ付けして正円にする
ある程度円形にして、ロウ付けします。
ロウは一番溶けにくい3分ロウ以下を使いましょう。
後々に爪パーツなどをロウ付けする際に楽です。
ロウ付けしたら、芯金棒やドリル刃のお尻を入れて、円を整えます。
紙に書いた円よりも大きくなってしまった場合は、ロウ目を糸鋸で切ってサイズダウンして再度ロウ付けをして調整します。
ヤスリでフォルムを成形する
円の大きさが定まったら、側面をヤスリで整えます。
ここの作業でテーパード(台形?)に削っておくと絞られたスタイリッシュな石座になります。
今回はストレートで作りますが、他のカットの作り方記事では全てテーパードにしました。
内側も耐水ペーパーをかけました。ペーパーを巻いた軸を使って、リューターで磨きました。
リューターがない方は、断面が丸い割り箸などに両面テープで耐水ペーパーを貼り付けて巻くと良いと思います。
ダメ押しでヤボウズを当てがって軽く叩くことで円を整えました。
できればやったほうが良い程度の工程なので、このためにわざわざヤボウズを買う必要はありません。
ルースを留めるために石枠を皿状にする
半丸の精密ヤスリなどで石がしっかりと沈むように、斜めに削っていきます。
この時気をつけるのは、ちょっとだけ平らに縁を残しておく事です。
角にしてしまうと仕上げた時に縁がガジガジになってしまいます。
難しい場合は、一旦角を作ってしまって、その後に平らな面に置いた耐水ペーパーで数回削ればOKです。
ただ、計算した石枠の高さよりも小さくなる可能性があるので、できれば縁まで斜めに削らないようにするのが作り方としてはベターだと思います。
とりあえずここまで沈むように作りました。
次は爪を作っていきます。
爪を作る
爪をつけたい部分に印をつけます。先程のロウ目部分に印をつけましょう。(完成した時にロウ目を爪で隠すことができます。)
しっかりと水平垂直の位置に測って印をつけます。
爪は少しでもズレた位置にあると、悪目立ちしてしまうために慎重に行った方が◎です。
爪の位置に溝を入れる
丸い精密ヤスリ(丸型、イビツなど)細く丸い面に削れるヤスリで印をつけた位置に“爪の受け部分”を作ります。
こうすることで爪が石に寄り添い、綺麗に止めることができるほか、ロウ付けの糊代となって強度UPが図れます。
(爪の位置がずれるリスクも減らせます)
ここの時点である程度まで磨いておくと仕上げの時に楽です。
磨いた場合はお湯と洗剤で良く洗い、脱脂しておきます。
今後も彫金を続けられるのであれば、超音波洗浄機(ヒーター機能付き)がおすすめです。
超音波洗浄器アースショックmini(17380円)
超音波の力で半自動で洗浄ができる機械です。
彫金で使うとなると、研磨剤の油脂を落とすためにヒーター機能は必須ですが、結構値段が高くなります。…が、1万円代で購入できてしまうのがこちらです。
強アルカリ性の洗浄液と併用するのがベストですが、廃液の都合上、水で薄めた食器用中性洗剤での使用が良いと思います。
丸線で爪をつける
1mmの丸線をU字型に曲げて、画像のように先程の溝に差し込みます。
材料は少々無駄になりますが、引っかかった状態でロウ付けできるので、初めての方でも落ち着いて作業できます。
本来は爪をかっこよく先細りに成形して、一本ずつロウ付けしていくのですが、火加減を間違えるとバラバラになってしまったりと難易度が高めです。
後ろから見るとこんな感じです。
溝にしっかりと爪がはまっていて、変に隙間がないかだけ気をつけます。
しっかりチェックができたら、次はロウ付けです!
爪をロウ付けする
ロウ付けすると、シルバーなどは表面がザラザラになります。
磨いてもマットな感じに戻ってしまうのですが、ボンプロ液というロウ付け用酸化防止剤を使うと良いです。
フラックスをつけた後、ボンプロ液に一瞬浸します。
火に当てると緑色の炎を上げて蒸発していきます。
白い粉のようなもので覆われますので、その後はいつものようにロウ付けをします。
フラックスはある程度温度が上がらないと溶け出さないので、フラックスが溶け出す前に熱で地金が荒らされてしまったり、酸化皮膜で覆われてしまう可能性があります。
ボンプロ液は温度の低い段階から表面を保護するので、上記のようなリスクを減らしてくれます。(火を当てるとすぐに酸化皮膜が出るステンレスや鉄などの銀ロウ付けも可能になります。)
Comokin(コモキン)ボンプロ S 200ml(1320円)
イエローゴールド系のロウ付けには必須の薬品です。
研磨後のロウ付けでも鏡面を保ったままロウ付けが可能になります。
通常のフラックスとの併用で鉄系のロウ付けも可能です。(200mlは画像の小さい方です)
滴ったボンプロ液が容器に落ちて引火しないように気をつけます。
引火してしまったら慌てずに容器の蓋を閉めて酸素を遮断しましょう。
当然ですが、机の上には燃えやすいもの(油類薬品・ウェス・紙など)はしまっておく様にします。
ロウ付けしました。
ロウの量はそこまで多くない方が、シャープに仕上がります。
石のサイズにもよりますが、この場合は多くても一か所1mm角くらいで良いと思います。
石枠の爪を整える
ロウがしっかり行き渡ったのを確認して、問題がなかったら爪の余計な部分をカットします。
石が留まる側の爪はカットせずに長いままにしておきましょう。(石留めをする際に切った方が失敗が少なく安全です)
石枠の底面を平らに削る
平らな場所に耐水ペーパーを置いて、底面を擦って平らにします。
斜めに削られないように、8の字を描く様に手を動かします。
石枠の底面を研磨する
100均で購入したMDF材のバインダーに粗い研磨剤(#1500程度)をつけて、先ほどと同じ様に8の字を描くように手を動かして磨きます。
同じ作業を#4000くらいの研磨剤でも行います。
研磨する場合はこのタイミングで…
マンドレールというリューター軸に、紙パック(牛乳パックなど)を丸く切って取り付けて、研磨剤(#4000〜#6000あたり)をつけて、研磨します。
終わったらよく洗って、汚れを落とします。汚れが付いたまま石留めをすると、石の下に汚れで石が黒ずんで見えてしまいます。
それを後々の工程で落とすのも非常に面倒です。
石を留めた後の研磨は細かなところまで磨けなかったり、石に研磨剤が当たってカットがだれてしまったりとリスクが高めですので、ある程度は磨き込んでおくと良いです。
ラウンドブリリアントカットの石留めのやり方
石留めの際は、しっかりと石枠を固定して”確実に手の力を爪に届ける”ようにする事が大切です。
彫刻台という固定道具を使ったりしますが、これがなかなかに高価です。
このタイプの石枠であれば彫刻台は不要ですので、100円ショップのものなどで代用してみました。
作り方はこちらの”道具のカスタマイズ方法”の項目で紹介しています。
バーナーなどで焦げない程度に炙って溶かし、石枠を沈めて固めます。
樹脂によって溶け出す温度はまちまちですが、ヒートフォームは熱湯につけると柔らかくなります。
石枠を沈める際、留めるところに固定材がかからないように注意します。
また、なるべく垂直水平に固定できるようにしてみてください(石が斜めに留まるリスクを軽減できます)
石枠の内部の固定材は邪魔になるので、固定材が柔らかいうちに棒でつついて凹ませておきます。
石が留まるようにセッティングをする
爪を一回外側に広げて、石を座らせて、ガードルの位置を見ます。
石がしっかりと座るかどうかを確認して、修正が必要であれば再度精密やすりなどで皿状の部分を削って調整します。
ラウンドブリリアントカットのガードル部分に爪を掛けたいので、精密ヤスリの刀刃などでガードル部分が当たるところの爪に刻みを入れます。
ラウンドブリリアントカットの石留めをする
爪を少しずつ広げて石を座らせて、先ほど爪に刻みを入れたところに石のガードルをひっかけます。
正しい位置に刻みを入れるのが難しいかと思います。何度か練習をするとぴったりの位置に入れられるようになってきます。
爪をヤットコ(ペンチなど)で寄せる
爪を対角線状に石の中心に向かって寄せていきます。
強い力は入れず、爪が石に当たったらそれ以上力は入れない方が無難です。
石が傾いていないかを確認
真横から石枠を見て、石枠に対して石が傾いていないかを確認します。
傾いている場合はガードルに入れた刻みを調整して、石の傾きを解消させます。
石枠の爪を倒す
金属を曲げると、一番強度の低いところから曲がっていきます。
この場合、刻みを入れた部分が一番強度が低い部分ですので、そこを基点に折れていくはずです。
刻みの角度分で折り曲げる事で、石に当てずに爪を曲げる事ができます。この刻みがないと、ガードルを基点に爪が曲がっていきますが、そうしてしまうとかなりの力がガードルに当たりますので石が割れてしまいます。
このくらいまで倒しておきます。
刻みの角度分倒して、石座に沿ったら終了です。
石枠の爪を整える
ニッパーで余分な爪を切ります。
大体ですが、石のテーブル面と爪の頭が同じ高さくらいになるように切るといい感じの仕上がりになります。
爪の頭を成形する
爪の頭を任意の形に調整します。
今回は丸型でいきますが、先端が先細りの”露形”や四角形の”角”などデザイン性を主張できるポイントです。
空枠から石留される方もここを工夫する事で、オリジナル性を主張する事ができます。
丸くなるように笹葉・刀刃などの精密ヤスリで調整しますが、石に当てると傷が入ってしまう事があります。
精密ヤスリの角を耐水ペーパーなどでツルツルにして、できれば磨いておくと良いと思います。
なるべく石に当たらないように注意しながら行います。
ナナコタガネ(ミルタガネ)で爪頭を丸める
今の状態では、爪の先がわずかに浮いているので髪の毛や糸くずなどが引っかかります。
ナナコタガネ(バリのでないサイズが適正です。今回は#18あたりだった気がします)で爪の頭をグリグリと丸め込みます。あまり力は入れず優しくやってみてください。
爪頭のてっぺんから爪の先に地金を寄せて、爪がフィットするように調整します。
丸めたところです。しっかりと爪が石に寄って、隙間がなくなりました。
熱にかけて固定具から外して、薬品(溶剤)につける
バーナーなどで軽く炙って、(ほんとに軽くです)固定材を柔らかくして石枠を外します。
ベンジン(アセトン)や除光液などに付けておくと固定材が溶けていきます。
いずれも引火性のある溶剤ですので取り扱い注意です。
石枠を仕上げる
先ほどの牛乳パックなどを使って(”研磨をする場合はこのタイミングで…”項目参照)#4000前後の研磨剤でヤスリ跡や傷を消します。
一回洗浄して、仕上げ研磨剤(#8000前後)を柔らかいリューター用のバフなどで磨きます。
爪頭も仕上げ用研磨剤を当ててあげると、まるっとした感じに仕上がって質感が良くなります。
ペンダント・リングにするには?
今回作った石枠は、単に石をセッティングするだけのものです。
実際にはネックレスにしたり、リングにしたりしなければなりません。
ネックレスはマルカンを爪をつけるタイミングで一緒にロウ付けしておきます。リングの場合は腕(輪っか部分のことです)を作らなければなりませんが、リングの場合は特に、リングの輪っかに合わせて石枠の形も調整しなければなりません。
ネックレスもマルカンをつける位置が適正でないと、お辞儀をしてしまう(着用時に石が傾いてしまう)のでバランスを考えなくてはなりません。
そこら辺の塩梅も、またご紹介できたらと思います。
最後までご覧いただきありがとうございました。
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