地金でぐるっとルースを包んだフクリン留めは、どこの彫金教室でも必ず教えている気がします。
フクリン留めは”伏せこみ”とも呼ばれることもありますが、要するに金属で縁を作って内側に押し倒して石の動きを封じる手法です。
フクリンタガネ(伏せこみタガネ)という道具を使います。
今回は100均のヤスリで作ったタガネでやってみます。
初めての方はこちらをどうぞ。
参考:自宅で金と天然ダイヤの指輪を作る手順(K18のロウ付け・ダイヤを割らずに留める方法)
ガーネットのカボションカットの覆輪リングの作り方 完成イメージ
必要な道具と材料
必要な道具
リングを作るための基本的な道具に加えて、フクリン留めの道具を使います。
フクリンタガネ・オタフク鎚(少々使いづらいですが木工用の金槌でも代用可能)と、彫刻台を使います(万力でも代用可能。重さがあるものが使いやすい)。
今回は頑張って100均のもので代用しました。自作タガネは使いやすいのですが、100均に売っていた固定具ははっきり言ってゴミでした(笑)
彫刻台があればいいのですが数万円するので、1500円くらいの万力が良いです。これならば確実にタガネの衝撃を地金に伝えられます。
石留の道具の買い物リストを作りました。とりあえずこれだけ持っておいておけば趣味を十分に楽しめそうです。
使用する材料
ガーネットのカボションカットのルースと、1.2mm真鍮板、2πの真鍮線を使いました。
初めての方はフクリン枠に使う板材が厚すぎると曲げるのに苦戦する可能性もあるので、真鍮板は薄いもの(今回のように1.2mm程度のもの)をお勧めします。
ガーネットのカボションカットの覆輪リングの作り方の手順
材料を切り出してフクリン枠を作る
1.2mm真鍮板を上図の様にカットします。
帯状のものは石の高さくらいの幅にして、焼きなましをしておきます。
板パーツは石の台座となりますので、気持ち大きめにしておきました。
巻いて合わせていきますが、これが一番難しいポイントだと思います。
初めての場合は石の横腹の部分から巻き始めると良いと思います。これが爪留めの石座を作っている場合は、ロウ目の位置に爪を付けて目立たないように配慮しなくてはいけませんので、ちょっと難易度が上がります。
100均の丸ペンチを使ってみました。使いやすくて安い!推しグッズです。
合わせ始めの端の部分はペンチで掴む余分として考えます。
油性ペンの印から印の間が石に合わせた部分です。
なるべく隙間が出来ないように気をつけます。
隙間が大きいと留めるときにシワが寄る原因になってしまいます。
ある程度まで巻けたら、ぴったりになるだろうというところで予測して糸鋸で切ります。
こんな感じで、あとはチョット押せば一周ぐるっと石に沿う感じに仕上がります。
思っているよりは難しくないとは思いますが、切りすぎて短くなってしまうよりかは、長めに切って糸鋸で切れ目に刃を通して微調整していった方が安全かもしれません。
切れ目を一度糸鋸の刃を通して合わせたらロウ付けします。(3分ロウ使用)
内側のはみ出たロウを削り取って、石が入る様に調整します。
ヤスリで削ったり、丸ペンチで少しずつ曲げて微調整していると入りました。
逆さから入れて石が傾かずに枠に入ったらOKです。
アプリコットジャムが乗ってるお菓子みたいですね。
石枠の台座を作る
台座の板と輪っかをロウ付けします。
強い火が輪っかのロウに当たりすぎると、ロウが枯れる(シワシワになってくる)現象が起きてロウ目が目立ってしまいますので注意します。
今回は輪っかの接合・板と輪っかの接合・リング腕と石枠の接合で計3箇所のロウ付けです。
輪っかと板の接合まで3分ロウ、リング腕との接合で7分ロウで充分かと思いますが、心配だったら3・5・7と使い分けてもいいと思います。
フラックスを板に塗って、バーナーで炙って水分を飛ばします。
フラックスの水分が蒸発したら、輪っかを置いてロウを輪っかの外側に置きます。
ロウ付けが上手い人は内側に置いた方がいいと思います。
もしロウ付けが失敗して内側にロウが塊で残ってしまった場合、石がしっかりと入らなくなってしまう為です。
ただ、内側からロウ付けをした方が見た目は綺麗だと思います。
外に置いて塊で残っても、丁寧に整えることができるのでそこまで気にしなくて大丈夫です。
ロウ付けが終わって、酸洗いが済んだら板を石枠の輪郭に合わせて削ります。
光穴を作ります。フクリンは特に一周地金で覆われているので、光穴を開けておかないと石が暗く見えますね。
ピンバイスなどで穴を開けて、糸鋸の刃を通してなるべく大きめにくり抜きます。
精密ヤスリで形を整えておきます。
石を入れてみたところです。枠が高すぎるので後でもう少し削ります。
貴金属で作る場合は、少しでも地金を無駄にしない様に初めから最小限の材料で作ることを心がける必要がありますが、ギリギリの寸法で作ると失敗した際にツブシが効かないので余裕を持って作ることをおすすめします。(真鍮ですし・・・)
こういう作り方は本業の職人さんから見れば最もやっちゃいけないやり方だと思います。貴金属はスリ粉(ヤスリで削った粉)にすると回収率が下がり、地金をその分ロストしてしまいます。すこしの貴金属ロストで利益は簡単に吹き飛んでしまいます。
また、削る時間ももったいないですからね。
なるべく削らず、最も効率的な方法で作らなければいけないというのが職人で、趣味で作るのとはそういうところが違ってくると思います。
裏から見たところです。美味しそうです。
光穴を磨く場合はこの際にやっておくといいと思います。
綿棒をリューターに取り付けて、研磨剤をつけて磨くと早いです。
枠を削って高さや厚みを整えます。
枠が厚すぎると留めで苦労しますので、先に向かって徐々に厚みを減らしました。
先に高さを整えて、それから厚みを調整すると工程に無駄がありません。
リングの腕を作る
続いて腕部分を作ります。
直径2mm線材をカットして、バーナーで熱して焼き鈍しをします。
両端をハンマーで潰して、もう一度焼き生して、ロウ付けしてリングを作ります。
リングを作る工程はいつも通りにやり方ですが、ロウ材は融点の低いものでも大丈夫です。
写真のような感じになりました。
サイズが小さいときは、芯金棒に入れた状態で金鎚で潰した部分をさらに金鎚で叩くとサイズを広げることができます。
石枠分を切って、合わせていきます。
画像のように石枠の幅に合わせてカットします。
やや小さめに切って、少しずつヤスリで合わせていくと失敗が少ないです。
合わせ目はちょっとだけ段差を作っておいて、ロウ材ののりしろを作っておきました。
ブロックを活用したり、第三の手などの道具を使って水平垂直になるようにロウ付けします。
これでロウ付けは最後なので、この時のロウ材は7分ロウなど、低めの融点のものがいいと思います。
石枠が歪まないようにサイズを整えます。
1番強度がないところから歪んでいくため、腕の材料が太いと、石枠が1番曲がりやすい箇所となっています。
歪んでしまうと直すのは難しいので、様子を見ながらやりました。
ガーネットのフクリン留め
ある程度磨いてヤスリの傷は取っておきました。
ペーパーを軸に巻いたものをリューターにつけて磨きました。
固定具にセットする
彫金では彫刻台という道具を使いますが、これが結構高価で安いものでも2万円前後します。
画像の上はミニ彫刻台と100均のプラスチック製万力です。あまり使い物にはなりませんが、今回は頑張って100均の万力で出来るか試してみようと思います。
ハッキリ言ってやりづらかったので、フクリン留めのために彫刻台を買うつもりのない方は、卓上ボール盤用の万力がおすすめです。(2,000円前後で購入できます)
これなら安定性もあって作業に十分な重さもあり、しっかりとタガネの力を石枠に伝えることができます。
フクリン留め以外にも石留め全般で役立ちそうです。
タガネを作る
市販でも売っているのですが、今回は100均のヤスリで作ってみます。
画像のようにオタフク鎚という金鎚でタガネを叩くやり方と、ヘラのようにしたタガネでグリグリして留めるやり方と二種類ありますが、オタフク鎚で叩くとなると彫刻台がないとしっかりと固定できず、タガネの力が地金へ伝わらないので少々キツイです。
今回はグリグリするやり方でやってみます。
オタフク鎚と伏せ込みタガネでやる方が、厚い地金を精密に寄せることができるので、ジュエリー製作ではこちらがメインです。
またの機会にやってみようと思っております。
グリグリする場合はなるべく薄いフクリン枠(フクリン部の地金厚みが真鍮:0.4㎜以下、シルバー:0.6㎜以下)がおすすめです。
真鍮は硬めですが、シルバーならもう少し楽に留まるのではないかなと思います。(…今回、かなり頑張らないと留まりませんでした。
100均の鉄工ヤスリを根元で折る
100均の鉄工ヤスリとダイヤモンドヤスリ、ペンチを用意します。
鉄工ヤスリをヤットコなどを使って根本から折ります。
ペンチなどを2本使ってやると安全です。折るときは怪我にお気をつけください。
ダイヤモンドヤスリで若干曲面にしながら折った面を整えます。
ダイヤモンドヤスリの角を使って、溝を作ります。
木片に穴を開けて柄を付けました。
後述する熱湯につけると軟らかくなる固定材や、100均にも売っている熱湯で軟らかくなる樹脂などでも柄を作ることが出来ます。
カボションカットのクフリン留の手順
今回はこの100均の黄色いおもちゃで固定したんですが、先に言っておきますがこれは何の役にも立ちませんでした。
最終的にパワープレイで無理やりねじ伏せた結果となりましたので、1500円くらいの万力でいいので重さがある程度ある金属製のものを強くお勧めします。
また、直で挟んでいますが、本来は熱湯につけると軟らかくなる固定材をつけます。
固定材につけてから万力に挟むと傷が付きません。
外すときは再度お湯につけて軟らかくして取ります。
こびりついた場合は、アセトン(除光液に含まれている成分です。)に漬けておくと溶けてきれいに取り除けます。
枠の上部分をヤスリで削って薄くして、曲げやすくしておきます。
枠の縁を作ったタガネの溝に当ててぐりぐりと内側に折りこんでいくと、徐々に石に沿って枠が曲がっていきます。
ピッタリのフクリン枠ならすぐに留まりますが…隙間が大きいと皺が寄ってしまってきれいに留まりません。
故に石枠がルースとぴったりになるように、石枠作りは完成を焦らず時間をかけると良いと思います。
石が動かなくなっても、無理してぐりぐりやっていると石が割れてしまいます。あともうちょっとだけぐりぐりしたいな…という気持ちがキケンです。(そういう時は大体割れる)動かなくなったら”石を留める”よりも”枠の形を整える”作業に移行しましょう。
曲がりづらかったら、枠を削って薄くします。あまり薄くしすぎると縁がガジガジになってきてしまいますので、縁はある程度厚みを残しておくと良いと思います。
そうこうしているうちに留まりました。一周ぐるっと隙間がなくなりました。この後にヘラでルースと枠の間を擦ったり、鏨で照り返しを切るケース(ピカピカに研いだ刃物でルースとの境目をぐるっと切ると、ルースと石枠の境目がきれいになります)もありますが、ルースを傷つけないように気を遣う必要があり上級者向けなので、今回はこのまま仕上げます。
あー…あの黄色いクランプはもう二度と使いたくありません。。。
仕上げは牛乳パックを円コンパスで切り抜いたものをマンドレールに取り付けたものに研磨剤をつけて磨きました。(リューターを使っています。)
腕と枠の境目は結び目のようなトリムを付けました。
腕は粗いペーパーでヘアラインを入れました。
ガーネットのカボションカットのフクリン留めリング まとめ
今回はカボションカットを留めてみました。
いい道具を使えばきれいに素早く留まりますが、最安値の道具でも若干の無理矢理感はありましたが何とか留めることが出来ました。
もう少し道具に投資することをお勧めしますが、趣味としての敷居の低さを感じていただけたら嬉しいなと思います。
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